サクラの樹の下には議論が埋まっている

日本語ディベートについて書きます。他のことも書くかもしれません。

ピックアップゲーム講評①

それでは早速1つ目の試合音声を見ていきたいと思います。今回扱うのは、慶應高校チーム対立華高校ディベート部チームの試合です。
(動画自体はhttps://www.youtube.com/watch?v=-U5XkYDzSoQからご覧になれます。)
肯定側の慶應高校についてはディベート甲子園などでも見かける学校ですね。私や兄もどこかの大会で見かけた覚えがあります。
一方否定側の立華高校については吹奏楽部の話しか聞いたことがなく、ディベート部があったとは初耳でした。(やはり「あなたが質疑をやりますか?」とか聞かれてしまうんでしょうか)
両チームとも、試合音声を聞いていただければ分かる通り非常にハイレベルであり、かつ既に公開されている大会予選結果を見るとなかなかえげつないバロットを叩き出していますので、私も気合を入れて試合を見ていきたいと思います。
※試合の流れに沿って記事を書いているので、各パートごとに一度試合音声を止めて感想などを書いています。また、気になったポイントはカードチェックのために何回か聞き直したりもしていますので、本番の試合ではおそらく確認できないような点も触れています。

1.肯定側立論
まずプランは3点あり、この時点で特筆すべきなのは拒否型の国民投票を採用している、というところくらいかなぁと思います。
メリットとしては、「国民の意見反映」が掲げられていました。立論全体としては、解説でWAOさんも触れている通り、かなり分かりやすい構成だったかと思います。大抵の場合、シーズン初期の立論というのは三要素がいまいち対応していなかったり、立論内で矛盾が発生したりしがちですが、今回の肯定側立論はそういったこともありません。概ね良い立論だったかなと思います。
ただ、聞いていて所々引っかかったポイントもあるので、詳しく見ていきましょう。

①内因性
今の国政選挙では個別政策に対する民意が表明できない一方で、政治家の側には自分の信じた政策を貫徹するモチベーションがあるため、政治家のやりたい政策と国民の意見が衝突した場合は民意が無視されるという分析でした。この内因性は現行制度の構造的な欠陥と、政治家側の民意を無視するモチベーションが立証された良い分析だと思います。
その中でも内因性2点目のエンドクレームは白眉で、証拠資料の文面からはやや読み取りづらい内容をうまく補えています。バッジ 2000の資料を読んだだけでは、「政治家には絶対にやろうと決めている政策があるんだな」という程度の理解で終わり、民意を無視するというアクションにどうつながるのかがいまひとつ明確になりませんが、選手から「このような性質により、自分の考えと民意が対立した時には民意を無視してしまう」と補足が入ることにより、「国民の意見が無視されている」という内因性の結論にうまくつながってくるわけです。
こういったエンドクレームはただ証拠資料を読むだけではなく、自分たちの立論の中での役割や、最終的に持っていきたい結論を理解しているからこそつけられるものでしょう。そのため肯定側立論の内因性は非常に参考になるスピーチでした。
※ここで兄からもらったアドバイスを加えると、このような問題は特に第一反駁や第二反駁の構想・原稿を作る際に気を付ける必要がある、とのことです。確かに、立論段階でしっかりクレームを書けていたチームが反駁パートになると、なるべく多くの論点を出したいという気持ちが先走り、多くの資料を読みっぱなしで終えてしまう(あるいは「だから内因性はありません」というような最後の結論部分しか述べない)というケースは結構見かけます。多少時間がかかったとしても、補足が必要な資料はちゃんと説明してあげた方がジャッジにも議論が伝わりますし、自分たちもその反駁の理由付けを確認できてその後のスピーチが説得的になるので、反駁パートの方は是非スピーチを見直してみてください。(私自身そういったスピーチはできていないのであまり偉そうなことは言えないのですが……)

一方、実例で挙げられている安保法案に関しては私はやや疑問が残っています。1・2枚目の朝日新聞の資料については特に問題ないのですが、3枚目として引用していた東京商工リサーチ 2015の使い方について違和感があるからです。クレーム・エンドクレームを聞く限りでは、肯定側はこの安保法改正の危険性についてアピールしたかったように思えます。しかし、「国民の意見が反映される」というメリットの本筋を考えれば、安保法改正が民意に反しているということが言えれば十分であり、その政策が専門家から見て良いものであるかどうかは関係ないはずです。実際、この実例以前の内因性の分析においては「政治家がいまいちな政策を実行してしまう」という分析は1つもされていません。なのでこの3枚目の資料およびそれに付随する分析があると、民意の話をしたいのか、それとも政策の質の話をしたいのかが曖昧になってしまい、あまり良い手とは言えないのかなと思いました。(なお、後の質疑応答の解説部分でもWAOさんが触れていますが、重要性を見た後でこの実例を見ると、悪い影響というよりはポジティブにしろネガティブにしろ影響が大きい政策について国民の意見を聞かなかった、というプロセス部分に重きを置いているようにも見えますが、それならその旨をクレームで示して欲しいところです)
※ちなみにこのポイントについて兄は、「狙いがわからないというのもそうなんだけど、そもそも資料の質として微妙な気がする」と言っていました。確かに、引用資料を聞いてみると安保法改正がどう危険なのか、具体的にどのような影響が発生するのかなどが述べられていません。強いて言うならば「一般論として無理やり通した法案は守られないし禍根を残すよね」ぐらいの話はしていますが、じゃあ改正安保法が国内でどう守られないのか、そこからどう争いが生じるのかなどは不明ですから、これをもってエンドクレームで言っていたような「日本を危険にさらすかもしれないような法案」というのは無理があるでしょう。なので、この方向性で話すにしてももう少し論拠のしっかりとした資料の方が良いかなと思います。

②解決性
国民が望む政策については署名が集まり、投票結果に政治家が従う。そして、政治家の側にも法案作成段階で民意を吸収するインセンティブが生まれるという主張でした。
これについての私の評価は、動画内でのWAOさんの解説とほぼ同じです。プランの2点目で「反対多数ならばその法律を無効にする」と言っているのだから解決性2点目の資料を読む必要はなかっただろうし、3点目の話は分けて論じた方が良いのではないか、という程度で特にどこかの論点を棄却するようなことはありません。
強いて言うならば、解決性1点目の署名数についてはやや疑問が残るところで、安保法案について1200万筆集まったのは分かりますが、それくらいの注目が集まり、なおかつ民意が無視されているイシューってどれくらいあるんだろうかというボリューム感が不明かなと思いました。ただ、これは実例を1個足せば問題解決という訳でもないですし、べつにボリュームが小さいと判断する理由もないのでそこまで問題ではないでしょう。
※書くことがなかったので兄に補足意見を求めたところ、解決性2点目の資料を私やWAOさんよりも厳しく取っていることが分かりました。曰く、「諮問型の住民投票に法的拘束力がなくても、政治家は明確にされた民意を無視できない」という主張が正しいならば、別に世論調査とかでも民意が明確に表示されれば政治家は従うのでは?とのことです。流石に肯定側に厳しすぎる解釈だと思いますし、兄自身否定側から指摘がなければ判定に含める気はないそうですが、この資料を読んでしまうと逆にそういった内因性に対する疑念を呼んでしまう、ということはあるかもしれません。時間効率的な意味でも議論評価的な意味でも読まないことをお勧めします。

③重要性
私がこの立論の中で一番厳しいなと思うのはこの論点です。
将来世代を含めて国民への影響が大きい政策を実行するときは国民の意見を聞かなければならない、という主張でしたが、動画内でWAOさんも解説している通り、資料の中身にかなり疑問が残ります。この足立さんの証拠資料の中では、「国政は民意に基づいて行うべき」という前提を受け入れた場合の帰結しか述べておらず、本当にその前提が成り立つのかは述べられていません。著者自身仮定法で書いてしまうような不確かな前提を果たしてジャッジと採用して良いのかは非常に迷うところですし、ノーインパクトまではいかなくても結構重要性を減じざるを得ないかなというのが私の見解です。
ここからは判定には入れられない考察にはなりますが、一応この資料内から読み取れる理由付けを探ると、「国民に大きな影響を与える政策について、その効果を望ましいと考えるかどうかの基準は国民の選好によるはずである。(何が幸せかは本人にしか分からないため)だから重要政策については民意を反映するという形で国民の選好を聞くべきなのだ。」というところになるのでしょうか?もしそういった主張になるなら、流石にこの資料では説明不足であり、選手からの補足も不十分化と思いますので、より改善していけるところでしょう。
また、もう少し広く使えるアドバイスをするとすれば、もう少し内因性の実例を活かしても良いのかもしれません。おそらく改正安保法について「影響が大きい」というところをアピールしたのは、この重要性と対応させる狙いだったのかと思うのですが、それならばこの重要性を論じた後で、もう一度この実例を引っ張れたはずです。(そんなに良いエンドクレームではないですが、「例えば内因性で述べた安保法案はまさに、国民に大きな影響があるのに民意に反して実行された政策であり、こういったものをプランによって是正していくべきです」という文章などが考えられます)既に内因性で述べているのでわざわざ触れる必要性は薄いかもしれませんが、自分たちの価値観を重要性で示した後でもう一度実例を引っ張ってくると、ジャッジとしては「あ、この実例は立論の筋にマッチしているし、このチームは安保法改正のこういう側面を問題視しているんだな」と考えます。細かなポイントではありますが、ジャッジの理解促進と争点の明確化にはこうしたことが効いてくるので、ぜひ気にかけていただきたいところです。(偉そうに書きましたが、私も多くのジャッジが本当にその辺りを効果的だと考えるかは自信がないのでこれについては様々な方の意見を伺いたいところです……)
※ちなみに兄は「練習試合でこの重要性出されたらノーインパクトで切っちゃうな」と言っていました。その理由としては、理由付けの怪しさも勿論のこと、クレームおよび資料内で強調されている「将来世代も含めた国民への影響が大きい政策」という部分に着目していることがあります。曰く、資料中で述べているような将来世代の福祉や環境問題に影響を及ぼす政策は、まだ生まれていない次世代の国民や場合によっては他国の住人のことも考えなければいけないはずなのに、国民投票では現在選挙権を持っている国民の選好しか反映できない。そのため、たとえ先述のような重要性の補完を行ったとしてもメリットの重要性は評価できないとのことで、証拠資料の内容をかなり厳しく見ているようです。勿論、否定側からの指摘がない状態でそこまで介入するのは流石にやりすぎだと思いますし、兄自身も本選の試合だったらそこまでは介入しないものの、練習試合なら教訓的な意味も込めて重要性を切る、というだけの話だったのでそれほど心配しなくて良いでしょうが、証拠資料や主張の理由付けを厳しめに見る人ならこの辺りはかなり減じるかもしれないですね。(解説を聞いていると、WAOさんもこの点については介入まで行かなくとも、気にはなっているようです。)

色々と書きましたが、全体としては聞いた段階で棄却するほどの論点はなく、立証不足というべき部分もほとんどない良い立論だったと思います。それでは否定側質疑に移りましょう。

2.否定側質疑
基本的には内因性の安保法案の実例に絞って聞いていました。
まず1つ目の質疑は、そもそも安保法案は何故強行採決されたのかという点。これは肯定側応答が上手く処理しており、内因性のロジックを再確認して決着がついたかな、という感想です。もしかしたら否定側としては、「政治家はなぜそんなに安保法案を通したかったのか➡実益があると考えていたから」というところを引き出したかったのかもしれませんが、もしそうならもう少し聞き方を工夫する必要があったと思います。単純に「何故強行採決したの?」と聞くだけでは当然ロジックを説明されて終わってしまうので、この場合は内因性2点目のバッジ 2000のエビデンスと絡めるのが妥当でしょうか。例えば、「じゃあ今自民党はこの安保法案をどうしても通したいと考えてた、ってことだと思うんですが、自民党はそう考えるだけの理由が何かあったんですよね?それこそバッジさんが言うところの、「実行可能な政策はこれしかない」と思い込むだけの実益とか。」という聞き方などが考えられますが、正直そこまで時間をかけて肯定側から何か良い情報が引き出せるかというと、せいぜい「実益があったかも」という程度が落としどころでしょうから、いっそそれは反駁に任せた方が良いという考え方もあるかもしれません。
そして、2つ目は安保法案の大きな影響とは具体的にどういうものか、という質疑でした。これはまさにジャッジとしても気になるところで、応答の切り替えしが期待される所でしたが、結果としては資料の文言が繰り返される時間がほとんどであまり議論が深まらずやや残念だったかなと思います。

この質疑応答について肯定側にアドバイスをするならば、2つほど考えられるところでしょう。1つは、質問の趣旨(今回なら「具体的に」と聞かれている部分)を意識しようという話。もう1つは資料を応答としてもう一度読み直すアプローチが適切だったとしても、それならばもう少しスピードを落として読んだ方が良い、という話です。特に後者は気を付けてほしいところで、応答で立論中の分析をアピールするのは良いのですが、それならば重要な部分だけ抜きだして、ジャッジや相手がしっかりフローに落とせるように、ゆっくりと読まなければせっかくもう一度引用している意味が薄くなってしまいます。特に応答はそんなに焦るパートでもないでしょうから、落ち着いて必要な部分をしっかりアピールする癖をつけていきましょう。
逆に否定側にアドバイスする場合、自分がどこまで理解できているのかも明示しよう、というところに尽きるかと思います。今回ならただ「具体的に教えてください」というだけではなく、「資料中で反響が大きかったとか、禍根を残すとか言っているのは分かったんですが、これは具体的にどういう現象を指してるんですか?」という表現を使うのも一手だったでしょう。自分が理解している部分を先に言ってしまうことで、相手からの意味のない再説明をある程度防ぐことができるかと思います。
とはいえ聞いているポイント自体はそこまでおかしいとは思わず、良い質疑応答だったかと思います。欲を言えば、安保法案の実例は多少放置したとしても重要性を崩したかった所ですが、この辺りはその後の戦略とも絡んでくるので、一概に言えることではないかもしれません。

3.否定側立論
デメリットは「利害調整のない政治」とのことでした。立論全体としては、WAOさんが解説で触れている通りストーリーが分かりやすく展開されており、最近の事例なども交えた良い分析だったかなと思いますが、一方でやや三要素の対応が甘いのではないか、と思われる部分が見受けられたので、詳しく見ていきましょう。

①固有性
様々な支持基盤を持つ議員同士が交流することが制度的に担保されている一方、実際に政策を作る官僚の側も、議員の支持を得るために様々な選挙区の利害を調整しなければならない。その結果として、現状では法律案が作成過程で大きく修正されることも珍しくない、という趣旨の固有性でした。
まず良いところから触れると、議員が多様な価値観に触れることが制度として担保されている、というところを押し出しているところが挙げられます。あくまで制度的な利点であって属人的な慣習ではないという点を資料単位でも、クレームの中でも強調しているのはとても良いと思います。また(これは立論全体を通して言えることですが)このチームは、証拠資料を使う際のクレームを大変工夫しているな、とも感じました。例えば固有性1点目の1枚目、毛利 2002の資料は、引用部分を読んだだけでは「多様な価値観を持つ議員同士が日常的に交流する」ということしか述べられておらず、議員がなぜ多様な価値観を持っているのか、多様な価値観が利害調整にどう影響するのか、などがいまいちはっきりしないところでしょう。しかし、立華高校はクレームの段階で「議員はそれぞれ異なる支持基盤を持っており」と付け加えることによって、資料内では不足している理由付けの部分を端的に補足しています。詳しく書くときりがないので以降は省略しますが、否定側立論にはこうした工夫が随所で見られ、証拠資料を精査して適切に使っていく、という姿勢が立論作成者にしみついていることがよくわかりますね。
しかし、当然ながら改善した方が良いかな、と思う所も存在します。私が聞いていて気になったのは、修正の中身は本当に利害調整に関わることなのだろうか、という点です。この固有性では利害調整が行われるロジックは示せていますが、3枚目の資料中で言っている「大きな修正」がこの利害調整の結果生まれたものなのか、という点は必ずしも明らかではありません。そのため、否定側の想定している形での法案修正が本当に何度も行われているのかは実は怪しいと思う次第です。
※兄が気になった部分は2枚目の飯尾 2013と3枚目の大山 2014の資料ではあくまで「官僚が与党議員と議論して法案を修正している」ということしか言っておらず、野党議員とはどうなのかはこの資料からは読み取れない。そのため、果たして否定側の想定する利害調整においては、与党議員の意見を聞くだけで良いのかは疑問が残る、とのことでした。私も兄も着目した点は違いますが、おそらく根本的な問題点としては「資料中で言われている議論・修正の具体的な中身が分からず、例えばどのような利害調整の結果どのような修正がなされるのかというイメージがつかめない」というところに帰着するのかなと思います。
以上のことから、固有性全体の評価としてはロジック・実態の分析ともに理解はできるが、細かく詰めていくと意外と怪しいところも出てくるという結論になるでしょう。

②発生過程
2点に分けて分析されており、まず発議自体がSNS等を通じて安易に行われてしまうとして、検察庁法改正案の例を引用。そして投票段階では国民が十分な知識をもたず直感で判断するし、利害調整もあまりなされないということで諸外国の実例を引用するという構成でした。発議段階と投票段階に分けて問題を分析しているのは大変分かりやすく、ジャッジとしても論点の整理が楽になる良い構成だなと思います。
一方、固有性との対応がやや気になるところではあります。発生過程2点目では利害調整ができない理由付けとして「正しい知識や情報を持っていない」ということになりますが、この主張を採用するならば本来、固有性で「現在の議員や官僚には正しく議論・利害調整するための知識や情報が十分に与えられている」という分析が必要なのかなと思います。逆に固有性の論証に対応させるなら、発生過程では自分と同じ立場の人としか議論をしないという集団分極化のような議論が求められるでしょう。
※兄は最後のカリフォルニア州の実例からそのような匂いがしないでもない、という評価をしたそうですが、この資料では「敵意と反発が残ったまま」と言われているだけで、具体的にどういったところが調整不足だったのかなどが読み取れないとも言っていました。この辺りは証拠資料を引用する際に、今一度「資料の著者は一体何を根拠にその評価を下してるんだ?」という視点を持つと良いとのことです。(これは私も兄もよくやらかすポイントで、あまり人のことは言えないのですが……)
また、直感で判断することや知識がないことがそもそもどう利害調整に関わってくるんだっけ、というポイントも実は明確ではないのかなと思います。この辺りはもう少し補足があっても良かったかもしれないですね。


③深刻性
こちらも2点に分けて分析されていました。今回の否定側立論は深刻性を非常に綿密に分析しようと試みており、これは大変良い姿勢だと思います。ただし、あるべき政治体制を突き詰めようとした結果固有性や発生過程の論点とはややずれてしまっているところが見受けられるのが残念なところです。
1点目は、民意を直接反映させるべきではないという論点です。
これは理由付けがやや気になるところで、1枚目の早川の資料内では「最近は1つの政治主体内で解決しないグローバルな問題も増えてきており、民意が多様である」ということを言っていましたが、何故グローバルな問題になると民意が多様になるのか、そもそも多様な民意とは具体的にはどういうことを指しているか等の説明はもう少し欲しかったところです。
また、2枚目の資料もあくまで「議会では責任の所在が明確になるが国民投票ではそれが不明確である」という主張であり、これも利害調整の話とどう絡んでくるのか、そもそも責任の所在が明確だとなぜ良いのかという疑問が湧きます。この辺りはWAOさんもコメントで触れている通り、深刻性というよりは新たな固有性と発生過程が追加された、という感覚になってしまうのが多数派でしょう。
ただ、議論自体は展開の余地があり面白いとも感じました。利害調整に失敗することがまずいことは前提とした上で、「失敗した場合に責任の所在が明らかではないと改善のサイクルを回していけない」という話につなげても良いですし、「どうせ責任を問われないから適当な立案をしてしまう」という話も展開できそうです。
なので、この深刻性1点目についてはそれぞれ面白い論点ではあるものの、今回のデメリットにはあまり適合していないのかな、という評価です。
クレームを聞いている限り、利害調整という立論の主軸を意識することはできているようなので、次は立論の話の流れの中に資料を馴染ませる段階かなと思います。

2点目は民主主義においてはしっかりと議論した上での最終手段として多数決を位置づけるべきだ、という話でした。
これ自体は1点目よりも利害調整と噛み合った分析であり、採用しやすい論点なのではないかと思います。ただし、解説でWAOさんも触れている通りこの深刻性は拒否型の国民投票を導入するプランと非常に相性が悪そうであり、肯定側としてはこの価値観にのっとりながら、「まさに政治家が十分利害調整してみて、それでも納得いかなかった法案について国民投票が発議されるんです」とスピーチすると大変綺麗だったでしょう。
この音声がかなり前のものである、ということも踏まえてもう少し一般的なアドバイスをすると、こういった失敗が起こる原因はプランの多様性もさることながら、この論題を「間接民主主義VS直接民主主義」と捉えていることにあるのかなと思います。プラン後は完全な直接民主制に切り替わる訳ではなく、あくまで現在の制度に追加で直接民主制的な強硬措置が付け加えられるだけのはずです。そのため、否定側の立論も、それに対するアタックも、プラン後の世界について国民の動きだけを分析しているだけでは実は片手落ちなのかもしれません。(私も、国民投票論題で試合をしていた頃にあるジャッジの方から「固有性アタックでそんなに議員を悪者にする必要ってあるの?別にこれって議会を解散しようって論題じゃないから議員でうまく回ってるところはそのままにして、国民投票でそこを補正していくってストーリーじゃ駄目なのかな?」と聞かれたことがあります。)

さて、大分長くなってしまいましたが、否定側立論を聞いた段階で気になったところはこんなところかなと思います。最初にも触れたとおり非常に良い立論だとは思いますが、個々の論証を細かく見ていくと、本当に同じ問題を論じてるんだっけと気になるところが実は多い、というのが全体感想かなと思います。例えば先述の深刻性2点目について兄は、資料中で述べている「少数派への配慮」とは固有性で言ってる利害調整の中に含まれてるのか、というところを大分疑問視していました。こういった細かな部分をきっちり対応させていくとより強固な立論になるでしょう。

4.肯定側質疑
ここは今までとは違い、私の評価が解説のWAOさんとかなりずれてしまいました。
論点の確認が序盤に展開され、深く切り込んだ質疑は固有性2点目の官僚の分析について専門的な知識を有している理由を聞いたことと、カリフォルニアの実例について深堀りしたぐらいかなと思います。
全体として、否定側の議論をかなり実害という論点に落ち着けようとしているのかなと思いました。それはおそらく肯定側立論で実害の論点を意識していたことや、重ねてきた練習試合の中で専門知を理由とした政策の質の低下が頻出論点だったことなどが背景にあるのかな、と思うのですが、今回の否定側立論が問題にしているのは、利害調整がなされるかどうかという論点であり、いわゆる実害的な話は実はどこでもされていません。利害調整というプロセスが欠けることの何が問題なのか、と詰めることは当然可能だとは思いますが、無理に実害の話につなげようとするのは私としてはあまり心証が良くないかなぁというところです。
練習試合で良く見る論点にたいして対策を立てること自体は良いのですが、試合で対戦した立論の本筋を決めつけることは逆に悪手ですから、そこはうまくバランスを取っていきたいですね。(もちろん今回は否定側も利害調整と言いつつ発生過程で知識の有無を強めに押すなど、紛らわしいところも目立ったので一概にこの質疑が問題だったとは言えないと思うのですが……)
カリフォルニアの実例に対して提示した疑問は、確かに2点ともジャッジとして気になるところではありますが、一方でこの試合展開で肯定側としてそんなに実害に帰着させて良いのかという問題は先述の通りです。
特に、最後の「実害がないのに民主的プロセスをたどる必要があるんですか?」という質疑は肯定側から出して大丈夫なのか?というのは素朴に疑問です。否定側の深刻性2点目が利害調整のプロセス自体の必要性をあまり論証できていないことなどを意識していたのかもしれませんが、肯定側の重要性も別に民意に従うこと自体の重要性はさほど論証できてませんので、プラン前とプラン後の政策でどちらの方が実害が大きいか、という勝負になりかねない危険な発言な気もします。
全体としては、気になるポイントを聞いてくれてはいるが、より否定側立論のイメージが複雑怪奇なものになってしまったなという所感です。

5.否定側第一反駁
結構多くの論点が出ていました。良いところから触れていくと、このパートについてはサインポスティングやナンバリングなどもしっかりされており、スピーチ面ではあまり問題ないでしょう。それより気になるのは個々の反駁のまとめの部分で、たくさんの反駁を出している点はとても良いと思うのですが、その結果として肯定側のストーリーはどこが切れていてどう評価すべきなのか、という結論部分はもう少し補足があっても良いのかなと思いました。
個々の反駁について検討すると、内因性に対して打たれた反駁はWAOさんも指摘している通り、理由付けが一言欲しいところです。また固有性の利害調整などの話と組み合わせると、現状の世界観としてかなり面白い議論が展開出来たと思いますが、単なる内因性への反駁で終わってしまったのはやや残念なところです。
兄は資料自体について、一体何をどう調べたのか、世論の動向に配慮してきたとはどの程度の一致度合いなのかとかが分からないとも言っていました。この辺りは先述の通り、資料に対する疑いの目を持つと良いでしょう。
安保法案についての疑問点は2点とも質疑の内容からさして変化がないので割愛します。それよりも3点目として提出された、「民意よりも実益を優先すべき」という議論にここでは注目しましょう。この議論は内因性にあてるべきなのか、という問題もありますが、そもそもこの資料は否定側立論で明確に実害らしき論点を出せていない状況で打つべきなのかという疑問が強いです。こういった価値比較を行うならば最低でも、①安保法案は実益を重視した結果強行採決したということ、②デメリットで実益を重視して民意を無視しているというバッファ機能のような話が論証されていることが必要ですが、こうした議論も提出されていませんので今回の試合にはあまりマッチしない議論なのではないか、と個人的には思います。逆にこの反駁を主軸にしていきたいならば、立論でもう少しこうした実益にフォーカスした分析が欲しいところです。
こういった、立論と反駁でそれぞれ良いことは言っているが思想が一貫していないというケースは他の試合でもよく見かけます。それぞれの原稿を別の人が並行作業で組んでいることが原因かとも思うのですが、そういった場合は作成し終えてから原稿を突き合わせるというやり方よりも、作成途中、あるいは作業にかかる前にある程度方向性の摺合せをしてしまうのが効果的ではないかと思います。
なので、細かく見ていくと結構厳しい論点も多そうに見えますが、聞いた段階で即座に棄却するほどの論点はなかったので、ここを1ARがどう処理するかというところでしょう。聞いた段階でこのような疑問を抱いていたとしても、肯定側から一切指摘がない状態で勝手に棄却するのはジャッジとしてはかなり抵抗があります。

それでは重要性についての反駁はどうだったかと言えば、ダウトを割愛すると1点反駁があったのみかなと判断しています。この内容はやや説明不足感はあるものの、資料を見る限りは「民主主義の目的は最善の政策を発見することであり、そのためには民意をそのまま反映するだけでは不十分」という主張でした。これについてはWAOさんの解説でも言われている通り、私も安保の実例に対する反駁とどう違うのかいまいちわからない、というところでした。
なお、兄によると証拠資料自体についても正直採用できる内容ではない、とのことです。確かに、民意をそのまま反映するだけでは最善の政策を選べないと言っていますが、何故それでは不十分なのかなどの説明もなく、これ単体で見ても理由付けに欠けるのかなとは思います。民主主義が採用された目的までひも解いて間接民主制の利点を解き明かそうとしたのは非常に意欲的な試みで良いと思いますが、やるならばもう少しこの論点に注力して展開した方が良かったかもしれません。
これは否定側立論にも言えることですが、この時点での否定側は結構論点や背景思想をいくつも展開しており、面白い話がいくつも出る反面一つ一つの立証が中途半端になっています。こういった試行錯誤が見られるのも練習試合ならではですね。これを兄に伝えたら、論題発表されてすぐの練習試合でちゃんとPDCA回して今の勝利やバロットにつなげてるんだからむしろこういう記録は好感持てるだろ、お前は2週間でこのレベルのもの組めるのか?と言われました。珍しく全面的に賛成です。

わき道にそれましたが最後に解決性への反駁を見ましょう。
内容としては、国民同士の議論では集団分極化が起こる(実際住民投票では起こった)というものでした。これは私もWAOさん同様新しい議論だと判断しています。その理由は動画の解説を聞いていただければわかるので割愛しますが、やはりここまで立論の内容から離れてしまうと、選手の側からよほど積極的な説明がない限りは新しい議論として取らざるを得ないところです。こういったことを防ぐためにも、個々の反駁をきちんと結論まで結び付けてあげることは必要です。
個人的な見解を言うならば、この議論はまさにNCの固有性で言っている利害調整の話と関係するでしょうから、発生過程に入れておくべき論点だったでしょう。中身が悪い、というよりは出したタイミングが悔やまれる論点でした。

さて、色々書きましたがこれはあくまで聞いた段階での私の感想であり、どこまで判定に入れられるかはこの後の肯定一反次第ですので、次に移っていきましょう。

6.肯定側第一反駁
時間配分としてはかなり良い構成だったと思います。ブロックについてはストーリーを伸ばすことで適切に処理できていますし、その説明もそれほど長くはなかったです。また、相手の反論を大まかにまとめて返しているのも適切な議論理解がうかがえますから、ここも高く評価できるポイントでしょう。
どちらかというと疑問が残るのはアタックの方でした。固有性に対しては、大まかに分けて本当に適切に議論して利害調整出来ているのか、官僚に専門知があるのかという2つの観点から反論しています。
まず知識の方は、先述した通りそもそも立論の筋としてあまり論証されていないし、ストーリーに据えていないと考えているのでそもそもここまで反証する必要があるか疑問でした。また、資料の扱いとしてもややエンドクレームが雑かなと思っており、資料中で言っている日本の官僚の人事制度の問題とはどういうものかはもっと説明が欲しいところです。資料中では何故日本の制度が駄目なのかは実は述べられていませんので、こういったポイントを補うためにはやはりNCで行われていたようなクレーム・エンドクレームでの補足が欲しいところです。また、プラン前後の差分という観点からは国民と比べてマシなのではないか、という指摘も否定側からはあり得るでしょうから、様々な意味で厳しい反駁かなと思います。
一方、利害調整については、議員同士の交流について内因性の安保の実例を当てていました。私は流石にこの一例だけをもって一般的に固有性が成立してないという反駁は採用できないと考えています。兄に聞いた話では、どうやらこの論題では実例を引っ張ってロジックを切ろうとする反駁をよく見るとのことだったので、これもその1つかなと思うのですが、こういった主張はもう少し一般化してもらわなければ流石にジャッジとして採用できない、というのが私の見解です。
ただし、そのあと出された利害関係者の意見を取り込むというところには一考の価値ありでしょう。審議会においては利害関係者が集まって意見を聞くので、正しい利害調整ができないという話でした。実はこれについて私と兄の判断は分かれています。まず、私はある程度資料内で業界の意見が反映されることによる歪みを論じられているから、アタックとして一定成立していると考えました。しかし、兄の方は資料内の理由付けはあくまで特定の政策に関する利害関係者を集めていることのみで、呼ばれている利害関係者がどう偏っているのかが述べられていないことを重視し、利害調整結果が歪むという主張をサポートできていない、と判断しました。これは兄が大分厳しくカードチェックしすぎていることが原因かと思うのですが、肯定一反としてももう少し補足しても良かったかもしれないな、とは思います。

また、発生過程に対しても良い反駁が出ていました。カリフォルニアの実例について質疑を伸ばす形で、今回のプラントの適合性や、利害調整がなかったことでどう問題だったのかなどを適切に指摘できています。特に、プラン後も議会は残り続けるというところをきちんと説明してくれたのは嬉しいところで、プラン後の世界観が非常に明確になったと思います。強いて言うならば、もう少しプロセス保障の深刻性について議論してほしかったところで、質疑でも述べた通り実害が起こってないなら利害調整とか正しいプロセスを踏んでなくても良い、とするなら私は肯定側の重要性も疑問です。その辺りの整合性が欲しいところではありますが、このスピーチも十分ハイレベルだったかと思います。
なお、バッジ 2010のエビデンスについてはWAOさんと全く同じ判断で棄却したので、省略します。

総合的に見ると、アタックについてもなかなか良い仕事をした、という結論になりそうですが、強いて苦言を呈するならば、固有性をここまで叩く必要はあったのか、という疑問があります。まさに肯定一反自身が言う通り、今回のプランでは議会が法律を作るところまでは何も変わらないのですから、そこの過程にケチをつける必要はなかったのではないかと思いましたが、この辺りはもちろんチーム戦略次第なので、私がとやかく言うことではありませんね。

7.否定側第二反駁
やや文字でまとめるのは難しいので詳しくは音声を聞いていただきたいのですが、彼はまず最初に、政治の意思決定を民意に従うか、プロの政治家が行うかという対立軸を示していました。その上で内因性が削れていることを確認し、重要性や安保改正への反駁を伸ばして民意を無視することの正当性を主張する、というのが肯定側フローでの大まかな流れです。
処理方法自体はこの試合では適切なやり方だと思います。内因性が一部残っており、民意が反映されるというプラン前後の差分はどうやっても否定できないので、さっさと重要性勝負に切り替えた姿勢は大変潔いところです。時間がなく、肯定二反の伸ばし方も予想しなければならないこのパートにおいては、メリットの発生を伸ばされても票が守れる良い判断だったでしょう。
しかし、すでに述べた通り本当に「民意or政治家」という対立軸で良いのかという問題や、実益を優先するという話は本当にデメリットと親和的か、などの問題があり、この辺りは今後改善されて行ってほしい(おそらくされた?)と思います。

ブロックについても良い分析でした。特に良かったのは発生過程の守り方で、議論が飛ばされるというシステム自体が問題だと主張し、実益の論点からデメリットを切り離したのは大変良かったと思います。(これをやるならば一反ももう少し調整できたと思いますが、それは練習試合なので摺合せ等の時間がなかったのかもしれません)
一方、固有性についてはやや疑問が残るところで、安保の例には適切に対処できていますが、その他の議論はほとんど実態として適切な調整ができているのかという土俵に持ち込んでしまいました。立論の評価でも触れたように、修正の具体的な中身に触れていない状態でその争い方に持ち込むのはやや分が悪いな、というのが私および兄の評価です。
また、深刻性についてももう少し深堀りでいなかったのも痛いです。実益・実害についての分析が薄い以上、このプロセス自体を守るインパクトは丁寧に触れてほしかったところで、このスピーチだと実害面を評価できないとなったときに、メリットとどう比較して良いか分からなくなってしまいます。

全体としては、争点の取捨選択はうまくできているが、立論段階での穴や思想のブレがそのまま残ってしまった、という評価になるかなと思います。練習試合ということを考えると、二反としては大変良い仕事をしたのではないでしょうか。

8.肯定側第二反駁
同じくこれも一度音声で聞いていただきたいのですが、肯定側の処理は非常に良かったです。立論の本来のストーリーをしっかりとさらいながら、最低限触れるべき反駁について端的に返せていて言うことなしでしょう。ただ、論点の処理がほぼ完ぺきだったが故に重要性の理由付けがそもそも弱い、というところが悔やまれます。このあたりのスピーチではどうしようもない問題点が浮かび上がるというのは選手が最大限の仕事をしている証拠ですし、練習試合の意義深いところでもありますから、こういった音声が世に公開されるのは嬉しいですね。
デメリットの方も適切に肯定一反を伸ばせており、良いスピーチだなと思うのですが、欲を言えば否定二反の再反駁に対してのレスポンスがもう少し欲しいところです。聞いていた限りでは、肯定一反の再説明的な部分が多く、否定二反が対抗論点として出してきた部分(例えば固有性の最後の資料)に対してもきっちり優位性をつけていく、というところが今後の課題かと思います。また、深刻性の議論を最後まで「結局国民生活に影響が出てなければ良い」としてしまったのは残念で、このスピーチなら「たとえプロセス部分を評価したとしても~」という予防線を張ってほしかったかなぁと思います。特に、ハイレベルな試合になればなるほどジャッジの判断は割れてきますから、一つの争点に絞れる前提で決め打ちしてしまうのは今後のためにもあまりお勧めできません。とはいえ、勝つならここ、という論点を意識できた良いスピーチではあったと思います。

9.総括
さて、ここまでいろいろと細かな評価を書いてきましたが、議論全体の評価をまだ書いてませんでした。結論から言うと、この試合は私なら迷った挙句にAffに入れると思います。決定方法としてはNegが全体的に実益の話はあまり論証できておらず、正しい利害調整という観点も固有性が怪しくなっていること、また利害調整のプロセスを保障すること自体の意味についてAffからかなり強い疑問が投げかけられていることと総合的に考えると、一定の発生が担保され、大きくは評価できないものの手付かずの重要性が残っているメリットを上回るほどではない、という過程です。ただ、正直なところNegの深刻性や固有性を本当にあれだけで切って良いか(証拠資料に対してのアタックはなく、否定二反の主張も採用可能なため)はかなり迷うところなので、本選でまでこの投票構成を取れるか、と聞かれたら厳しいですね。
また、兄はここまで触れてきたとおり、デメリットも深刻性2点目と固有性の対応が怪しく小さくしか取れないが、そもそもメリットをノーインパクトで切っているのでオフセット寄りのNeg、ということでした。これも私同様、かなり介入をした結果の投票なので本選でまでこの意思決定をするかと言われたら自信ないと言っていました。
まぁどちらにも入れられる接戦だったと思いますし、そもそも過去の練習試合の音声に勝手に感想を書いているだけですので投票はさほど重要ではないかと思います。それよりも、既に書いたようにこういった選手の試行錯誤の跡がはっきりとわかる試合が、論題発表から2週間しか経っていない時点、しかも昨今のプレパがしづらい環境でも残された、というのが一競技者として大変嬉しいことです。兄弟そろって選手の方々に最大限の敬意を示します。

ということで、今回はDCSの練習試合音声①を扱いました。予想以上の長文となり、私も大分疲れましたので、次はいつになることやら……
DCSの決勝戦までには上げたいと思うのですが、JDA論題も先日発表されましたし、私も兄も忙しくなりそうなので、善処するとだけ申し上げておきます。